アレルゲン表示の法令遵守

飲食店と食品表示法|メニュー表示の実務ガイド 2026

著者 Ibrahim Anjro · · 18 分で読めます

東京の飲食店の店長がカウンターでノートパソコンを開き、アレルゲン情報を登録したデジタルメニューと弁当の表示ラベルを見比べている様子

食品表示法は容器包装に入れられた加工食品を対象とする法律で、店内で調理して提供する料理は食品表示基準第1条により適用除外です。ただし例外が1つあり、そしてメニューの記載や写真を本当に拘束しているのは景品表示法の優良誤認表示です。条文番号、2026年4月のアレルゲン改正、保健所の立入検査、テイクアウト時に義務が発生する境界線までまとめました。

TL;DR

  • 何の法律か。食品表示法(平成25年法律第70号)は、JAS法・食品衛生法・健康増進法に分かれていた表示ルールを一元化した法律です。具体的な基準は内閣府令の食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)が定めています。

  • 日付と出典。アレルゲンの義務表示品目は2026年4月1日にカシューナッツが追加されて9品目になりました。消費者庁のアレルギー表示のページが一次情報で、2年間の経過措置期間が設けられています。

  • 何が変わったか。2023年3月にくるみが義務化、2024年3月に推奨からまつたけが外れてマカダミアナッツが入り、2026年4月にカシューナッツが義務へ、ピスタチオが推奨へ移りました。合計は29品目のままです。

  • 適用範囲、はっきり言います。食品表示基準第1条は「加工食品又は生鮮食品を設備を設けて飲食させる場合には、第四十条の規定を除き、適用しない」と定めています。店内で提供する料理は、第40条を除いて表示義務の対象外です。

  • Intermenuの位置づけ。義務のないものを義務のように売ることはしません。法律が本当に求めるもの——正確で、裏付けがあり、あとから検証できる表示——を1つの画面で管理できるようにします。

本記事は飲食店のアレルゲン対応ガイドの法令面の補足です。運用手順はメニューへのアレルゲン・食事制限タグの付け方をご覧ください。

食品表示法とは何か、飲食店のどこに関わるのか

食品表示法は、食品関連事業者が販売する食品の表示について定めた法律です。飲食店に関わるのは、店内提供の料理そのものではなく、仕入れる包装食品と、容器包装に入れて売る食品、そして表示の裏付けとなる記録の3点です。

2015年4月1日に施行され、消費者庁の食品表示法のページにあるとおり、実務上のルールはすべて食品表示基準に落とし込まれています。第3条は「食品関連事業者が容器包装に入れられた加工食品を販売する際(設備を設けて飲食させる場合を除く。)」と書き出され、名称、原材料名、添加物、内容量、消費期限、保存の方法、アレルゲン、栄養成分表示を並べます。皿に盛って出す料理はこの入口を通りません。ここを押さえると、以降の判断がほとんど自動的に決まります。

店内で提供する料理に表示義務はあるのか

原則としてありません。食品表示基準第1条のただし書が「加工食品又は生鮮食品を設備を設けて飲食させる場合には、第四十条の規定を除き、適用しない」と明記しているためです。ただし、この「第40条を除き」という一句が、飲食店にとって唯一の例外になります。

この府令は、食品関連事業者等が、加工食品、生鮮食品又は添加物を販売する場合について適用する。ただし、加工食品又は生鮮食品を設備を設けて飲食させる場合には、第四十条の規定を除き、適用しない。

唯一の例外——第40条の生食用牛肉

第40条は、牛肉(内臓を除く)で生食用のものを容器包装に入れずに消費者に販売する場合、店舗の見やすい場所に次の2点を表示することを求めます。

  • 一般的に食肉の生食は食中毒のリスクがある旨

  • 子供、高齢者その他食中毒に対する抵抗力の弱い者は食肉の生食を控えるべき旨

ユッケやタルタルを出しているお店は、メニューの体裁がどうであれ、この掲示が法令上の義務です。逆に言えば、店内提供の料理について食品表示基準が求めるものはこれだけです。

アレルゲンは義務ではなく、しかし推奨されています

消費者庁は外食・中食の食物アレルギー情報提供について事業者向けのパンフレットや動画を用意していますが、これらは自主的な取組を促すもので、表示義務ではありません。義務と推奨をここで混同しないことが、無駄な投資を避ける最初の分岐点です。

アレルゲン表示:義務9品目と推奨20品目

「義務8品目」と覚えている方が多いのですが、2026年4月1日の改正で9品目になりました。えび、カシューナッツ、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生(ピーナッツ)です。これに推奨20品目を足した29品目が「特定原材料等」です。

推奨20品目(特定原材料に準ずるもの)

アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、キウイフルーツ、牛肉、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、ピスタチオ、豚肉、マカダミアナッツ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン。府令ではなく通知で推奨されている点が、義務品目との決定的な違いです。

見直しの履歴と経過措置

  • 令和4年度(2023年3月)くるみを特定原材料に追加

  • 令和5年度(2024年3月)推奨にマカダミアナッツを追加、まつたけを削除

  • 令和7年度(2026年4月)カシューナッツを特定原材料に追加、推奨にピスタチオを追加

カシューナッツには2年間の経過措置期間があり、2028年3月末までに包装資材を切り替えます。ただし消費者庁の令和8年4月1日付事務連絡は「可能な限り速やかに表示に努めるよう」求めています。この29品目は容器包装された加工食品の話で、店内提供のメニューを直接拘束しません。それでもIntermenuで29品目をそのままタグ体系にしておけば、義務化のたびに作り直す手間がなくなります。

外食・中食で表示が義務になるケース

義務が発生する境界線は「誰が作ったか」ではなく「作った人がその場で説明できるか」です。消費者庁の食品表示基準Q&A(別添 弁当・惣菜に係る表示)が、この線を具体的に示しています。

店内で調理して容器包装し、店内で売る場合

食品表示基準第5条の「食品を製造し、又は加工した場所で販売する場合」に当たり、原材料名、内容量、栄養成分の量及び熱量、事業者の氏名・住所、原産国名、原料原産地名は不要になります。省略できない項目にご注意ください——名称、消費期限、保存の方法、アレルゲン、添加物は第5条の免除リストに入っていません。

セントラルキッチンから配送して売る場合

Q&Aは「製造又は加工をした者が消費者に直接品質等について説明できないことから、食品表示基準第3条及び第4条に定める表示が必要になります」としています。セントラルキッチンを導入した瞬間に、フル表示の義務が発生します。バックヤードや同一敷地内の施設で調理する場合は店内調理と同じ扱いで、判断基準は距離ではなく説明できる関係にあるかどうかです。

景品表示法の優良誤認:メニュー写真と実物の差

食品表示法が届かない領域を、景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)が正面から押さえています。飲食店のメニューに関する法的リスクの本体は、こちらだと考えて差し支えありません。

第5条第1号の優良誤認表示は、商品・役務の品質、規格その他の内容について「実際のものよりも著しく優良であると示し」、不当に顧客を誘引するおそれのある表示を禁じています。特定の事項の表示を義務づける法律ではなく、行った表示が実際と違うことを禁じる法律だという点が、食品表示法との根本的な違いです。

対象は「あらゆる表示」

事業者が商品・役務の供給の際に顧客を誘引するために利用するあらゆる表示が対象であり、容器・包装上のものだけではなく、パンフレット、説明書面、ポスター、看板、インターネットをはじめとして、対象範囲はあらゆるものに及ぶ。口頭によるものも表示に該当する。

紙のメニュー、卓上POP、店頭の写真パネル、食べログやぐるなびの掲載内容、出前館やUber Eatsの商品画像、そしてホールスタッフの口頭説明。すべてが「表示」です。

処分と制裁

  • 措置命令(第7条)差止め、再発防止、公示を命じられます。違反行為がすでに終わっていても命じられます。

  • 課徴金納付命令(第8条)対象期間の売上額の3%。対象期間は最長3年で、課徴金額が150万円未満のときは課されません。

  • 措置命令違反(第46条)2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金。

  • 直罰(第48条)2024年10月1日施行の改正景品表示法で新設され、優良誤認・有利誤認そのものに100万円以下の罰金が科されます。行政処分を待たずに罰則が及ぶ点が大きな変化です。同じ改正で確約手続(第26条〜第33条)と、過去10年以内に課徴金納付命令を受けた事業者への1.5倍加算も導入されました。

2013年のメニュー表示問題とその後のガイドライン

2013年、ホテルや百貨店、レストランで実際の食材と異なる表示が相次いで発覚しました。これを受けて消費者庁が2014年3月28日に公表したのが「メニュー・料理等の食品表示に係る景品表示法上の考え方について」です。35問のQ&Aは、いまも飲食店の表示判断の基準になっています。

実際に問題とされた例

  • 成形肉を「ステーキ」と表示(Q-2)一般消費者は「牛の生肉の切り身を焼いた料理」と認識するため問題となります。表示する場合は「成形肉使用」等を料理名の近傍又は同一視野内に明瞭に記載する必要があります。

  • ブラックタイガーを「車海老」と表示(Q-8)平成25年12月19日、旅館運営事業者に措置命令が出ています。

  • スパークリングワインを「シャンパン」と表示(Q-34)同日、ホテル業等を営む事業者に措置命令が出ています。

  • 一部が有機でないのに「有機野菜のサラダ」(Q-27)中国産の栗を「フランス産の栗」(Q-25)他のチーズも使いながら「カマンベールチーズ使用」(Q-31)産地名を冠した野菜の大半が別産地(Q-23)

ガイドラインが示す判断の物差し

同ガイドラインは、違反かどうかは「表示上の特定の文言等のみからだけでなく、メニュー・料理等の実際の表示全体から一般消費者が受ける印象と実際との差を個別に検討する」としています。写真の下に小さく「イメージです」と入れても、全体の印象が実物と大きく違えば逃げ道にはなりません。

生成AIで作った料理写真も「表示」です。エビが6尾写っていて3尾しか出ないなら、量について実際より優良に見せたことになります。実物に忠実な作り方はAI料理写真のプロンプト集メニューへの写真の追加方法で解説しています。Intermenuなら写真の差し替えは数秒で終わり、印刷物を刷り直す必要もありません。

保健所の立入検査で何を見られるか

保健所が見るのはメニューのデザインではなく、施設と工程と記録です。根拠は食品衛生法で、第28条第1項が都道府県知事等の職員による臨検検査と食品等の収去を認めています。これを拒み、妨げ、忌避すると第85条により50万円以下の罰金です。

  • 営業許可(第55条)施設基準に適合していること。無許可営業は第82条により2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金です。

  • 食品衛生責任者の設置と掲示。

  • HACCPに沿った衛生管理(第51条)2021年6月1日から完全義務化されました。厚生労働省のHACCPのページに業種別手引書がまとまっています。

  • 衛生管理計画と実施記録、温度管理、手洗い設備、ねずみ・昆虫の防除、仕入先の記録。

メニューが見られるのは、食中毒調査や苦情対応で提供したものと表示したものを突き合わせるときです。日付入りのメニュー履歴と料理ごとの原材料表がIntermenuに残っていれば、この照合は数分で終わります。

テイクアウト・デリバリーで変わる表示義務

持ち帰りだから自動的に表示義務が発生する、ということはありません。分かれ目は「あらかじめ容器包装されていたか」です。消費者庁のQ&Aは、飲食店の実務にかなり寄り添った回答をしています。

客の注文に応じて弁当、惣菜をその場で容器に詰めて販売する行為は、食品表示基準における容器包装に入れられた加工食品の販売に該当せず、食品表示基準第40条に定める生食用牛肉の注意喚起表示を除き、食品表示基準に定められた表示は必要ありません。

繁忙時に備えてあらかじめ詰めておく場合も同じ扱いです。Q&Aは「繁忙時に備えてあらかじめその日の販売見込み量を容器に入れておくことは、客の注文に応じて容器に入れる行為と同様と考えられる」としています。ランチのピーク前に弁当を並べておく運用は、対象外のままです。

出前館・Uber Eatsの掲載

配達に切り替えても食品表示基準の結論は変わりませんが、景品表示法は変わりません。プラットフォーム上の商品画像と説明文は「表示」であり、供給する事業者はお店です。実物より大きく見える写真や、店内メニューと違う内容量の記載は、そのまま優良誤認のリスクになります。Intermenuで表示を1か所にまとめておけば、店内と配達で内容がずれる事故を防げます。手順はQRコードメニューの作り方をご覧ください。

デジタルメニューが表示管理を楽にする理由

デジタルメニューを入れただけで法令順守になるわけではありませんし、そう約束する事業者は信用しないでください。解決するのは3つ、版が1つに定まること変更履歴が日付とともに残ること多言語でも情報が欠けないことです。

  • 原材料の一元管理。料理ごとの原材料表が1か所にあれば、店内メニューにも弁当ラベルにも同じデータから出力できます。

  • 表示の裏付け。景品表示法第7条第2項では、消費者庁が表示の裏付けとなる合理的な根拠資料の提出を求めることがあります。仕入先の規格書と紐づいた原材料表は、その提出資料そのものです。

  • 多言語でアレルゲンを落とさない。英語版で「落花生を含む」が消えるくらいなら、翻訳しないほうがましです。手順は多言語メニューのアレルゲン表記にまとめています。

  • インバウンド対応。29品目のタグを多言語で出せることは、訪日外国人客の集客そのものに効きます。

Intermenuではメニュー、アレルゲンタグ、写真、言語が1つの管理画面にまとまり、卓上のQRコードは差し替え不要です。決済がPayPayでも現金でも、表示された¥の金額と会計は同じデータから出ます。法的責任の全体像はアレルゲンに関する飲食店の法的責任をご覧ください。

よくある質問

店内で提供する料理にアレルゲン表示の義務はありますか。
ありません。食品表示基準第1条により、設備を設けて飲食させる場合は第40条を除いて同基準が適用されないためです。ただし消費者庁は外食・中食での自主的な情報提供を推奨しています。

義務のアレルゲンは8品目ではないのですか。
2026年4月1日にカシューナッツが追加され、9品目になりました。えび、カシューナッツ、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生です。2年間の経過措置期間が設けられています。

店内提供で唯一義務になる表示は何ですか。
食品表示基準第40条の生食用牛肉の注意喚起表示です。生食のリスクがある旨と、子供・高齢者など抵抗力の弱い方は控えるべき旨を、店舗の見やすい場所に掲示します。

テイクアウト用の弁当にラベルは必要ですか。
注文を受けてその場で詰める場合、また繁忙時に備えてあらかじめ詰めておく場合は、第40条を除き表示は不要です。店内で調理して容器包装し販売する場合は、名称・消費期限・保存の方法・アレルゲン・添加物の表示が必要です。

セントラルキッチンから運んだ商品はどうなりますか。
製造した者が消費者に直接説明できないため、食品表示基準第3条・第4条のフル表示が必要になります。原材料名や栄養成分表示の省略はできません。

メニュー写真が実物と違うと違法ですか。「イメージです」と書けば大丈夫ですか。
景品表示法第5条第1号の優良誤認表示に当たるおそれがあります。判断は文言だけでなく表示全体から一般消費者が受ける印象と実際との差で行われ、注記の有無だけで結論は変わりません。

優良誤認の罰則はどれくらいですか。
措置命令に加え、対象期間の売上額の3%の課徴金があります。2024年10月1日施行の改正で、優良誤認そのものに100万円以下の罰金という直罰規定(第48条)が新設されました。

保健所の立入検査を断れますか。
断れません。食品衛生法第28条第1項に基づく臨検検査や収去を拒み、妨げ、忌避した場合、第85条により50万円以下の罰金が科されます。

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著者:

Ibrahim Anjro

Founder & Business Developer

+10 years of exp in Business Development